発育期のサッカーにおけるスポーツ外傷・障害⑪
― 大腿部挫傷Charley horse(チャーリーホース)―
大腿部の挫傷は、体接触競技に多くみられ、タックルなどの相手との接触や反則、転倒、転落、衝突などでおこります。大腿四頭筋は体の中で最も大きい筋肉であり、大腿部前面の打撲で、筋肉が大腿骨との間に挟まれることにより、腫脹、皮下出血、限局性の圧痛、筋肉硬直、膝の屈曲制限(膝関節の可動域制限)などをおこします。大腿四頭筋のうち、外側広筋と中間広筋におこりやすく、大腿直筋ではまれです。膝関節が腫脹し、膝関節血症を合併することもあります。筋損傷の程度や血腫の有無を調べるためにCTやMRI検査を行います。
挫傷の重傷度(表)は、腹臥位での膝関節の屈曲角度で決まり、歩行困難になるものまでありますが、受傷直後はほとんど気づかず、練習や試合の後に筋肉の深部の痛みを訴えるものが多いようです。12~24時間経過しないと正確な障害の程度を判断できないことも多いので、未然に適切な処置を行うことが大切です。内出血と筋肉の痙攣を軽減するために、膝を完全屈曲させて、大腿四頭筋を伸展させます。このとき、膝を曲げて痛みが強くなれば、無理に膝は曲げさせないようにします。痛みのない程度に膝を曲げ、受傷部にアイスパックを当て、その上から弾力包帯を巻き、圧迫します。15分間氷冷し、45分休むことを2日間繰り返します。圧迫を加えると痛みがひどくなり、腫れがでるようであれば、膝を曲げずに伸ばしたままで、つま先から下肢全体に弾力包帯で圧迫を加えます。
治療は重傷度に関わらず、受傷直後よりRICE(安静、冷却、圧迫、挙上)処置を2日間行います。その後は、ホットパックなどの温熱療法、ストレッチングを徐々に始めますが、早急すぎて再出血させないことが大切です。軽症では1週間程度で競技復帰できますが、中等症では1~2週の安静後、筋力強化が必要となります。重症では受傷直後より強い疼痛と膝屈曲制限があり、2~3週間固定しますが、筋断裂や大きな血腫があれば、手術的治療が必要になります。リハビリテーションは、患者のストレッチングから始め、患部周囲の関節可動域が正常範囲になれば、徐々に筋力強化に移ります。筋力強化は、直線的な筋収縮だけでなく、ねじれ方向での筋収縮も行い、練習(前)後に15分間氷冷します。3週間以上経過し、可動域の拡大が思わしくないときは、単純X線検査で、筋肉内の骨化(化骨性筋炎)の有無を確認します。