テレビ・ビデオの子どもへの影響③
― 子どもへの影響① ―
物が豊かになり、便利になった現代社会において、機械文明の発達がもたらしたテレビやビデオはどこの家庭にもあるメディアとなってきています。日本では1953年(昭和28年)からテレビ放映が開始され、1000台の街頭テレビに多くの人が群がっていた時代から、一人一台、小型携帯テレビの時代へと変わりました。しかし、最近この文明の利器ともいえるテレビやビデオが子どもたちの成長発達、特に言葉や心の発達に大きな影響を及ぼしていることがわかってきました。
古くは1976年(昭和51年)に、カウンセラーの岩佐京子氏(ルナこども相談所所長)がその著書「テレビに子守りをさせないで」の中で、3歳児健診時に言葉の発達の遅い子どもや自閉的で対人関係のうまくいかない子どもが、テレビを長時間見ていることを指摘し、テレビを子守り代わりにしないように警告しました。その後「子育てにテレビはいらない」、「危険!テレビが幼児をダメにする!」を著し、少なくとも3歳までテレビを切って話しかけることの大切さを強調し、テレビなしデーを提唱しました。
1981年には総合研究開発機構と国際小児科学会、日本小児科学会が共催して「子供と都市」というシンポジウムが開催され、小嶋謙四郎早稲田大学教授(発達臨床心理学)が、3歳児健診で、運動機能の発達は正常にありながら言葉がなく、外界への探索と操作が障害され、母親との愛着形成がみられず、人見知りがない「新しいタイプの言葉遅れの子供たち」を報告しています。
一方、米国では、米国小児科学会(American Academy of Pediatrics;AAP)が1980年からマスメディアの影響から子どもたちを守るために、両親や小児科医に対して、マスメディアへの関わり方について報告し続けています。1999年にAAPの公衆教育委員会は「メディア教育」というタイトルで、①メディアの暴力シーンや表現が小児を暴力的性格にする、②プログラムにしろ、広告にしろ性的なものが多く、若者は年間14000回以上これらに暴露されているが、若者のためになるものは少ない、③タバコ会社は年間600億ドル、酒造会社は年間200億ドルの宣伝広告を行っており、これらを見ていると、何となく喫煙や飲酒をしたくなる、④テレビやテレビゲームと肥満ならびに学業成績との関係についての両親や子どもに対するメディア教育は、メディアの悪影響を緩和すると報告しています。そのなかで、テレビが子どもに与える影響として、暴力番組やコマーシャルなどがあるが、それ以上に毎日テレビを見続ける習慣が、みんなと遊んだり、本を読んだり、大人と交流するなど、子どもの成長に必要な貴重な時間を奪っていることを危惧しています。そして、それぞれの子どものメディア歴を聴いて、テレビ番組の注意深い選択、番組を一緒に見て討論する、テレビの批判的見方、メディアで過ごす時間の制限、よい番組の選び方、メディア以外の活動、子ども部屋にテレビを置かない環境をつくる、ベビーシッターとしてテレビやビデオを使用しない、特に2歳以下の乳幼児にはテレビを見せないなどを両親に勧告するように提言しています。