アデノウイルス感染症④
―予防と発生時の対策―
アデノウイルスの感染は発病後1週間ほどが最も伝染力(でんせんりょく)が強く、口・鼻の中やのどの粘膜あるいは眼の結膜(けつまく)から体の中に入りこんで感染します。特に、咽頭結膜熱はプールで感染するため「プール熱(swimming pool conjunctivitis)」と呼ばれ、感染力が非常に強いとされています。兄弟がかかると、2~3日して次の子が感染して発熱しますので、予防のためには感染者との濃密な接触を避ける必要があります。また、保育園や病院など、小さなお子さんが集団になっている場所では、世話をする人たちがウイルスを媒介して感染を拡げることもあります。
感染経路は、多くは鼻汁や口からの唾(つば)や咳(せき)のしぶきの飛沫感染ですが、管理の悪いプールでは結膜からの感染や便を介しての経口感染も考えられます。ただし、潜伏期(せんぷくき)であっても発病直前には、涙の中のウイルスを手指を介して運んでしまうことがあるので、普段から手指が何らかのウイルスで汚染している可能性を考えて、手を良く洗うことを習慣付けることが大切です。食事や鼻をほじる前には特に手を良く洗いましょう。鼻をほじることは、鼻の中にウイルスを運んでしまう可能性があるので、鼻をほじるよりは、鼻をかむほうが良いでしょう。涙や目やに(眼(がん)脂(し))にウイルスが含まれて接触感染も起こすので、自分の目はこすらないようにして、分泌物はティッシュペーパーで軽くふきとって下さい。こすると目はますますかゆくなります。また、寝るときは(まだ両眼になっていないとき)患眼の涙が耳側へ流れるような頭位がよいでしょう。目やに、咳、便の中にはウイルスが排出されるので、タオルは他の家族と別にして、丁寧に手を洗いましょう。乳児はうつりにくい(お母さんから抗体をもらっているので)ようですが、便にもウイルスがいますので、排泄後、おむつ交換後の手洗いを充分したり、下痢の子のおむつ替えは手袋を使うなどの対策も必要です。家庭では、感染者と、道具や眼鏡・タオル・寝具等を共用しないことが大切です。洗濯物については、感染者のものと他の家族のものとを、一緒に洗わないことや風呂は、感染者が一番最後に入る等の注意も必要です。症状が治った後も、ウイルスは咽頭からは発症後7~14日間、便から30日間ぐらい排出し続けるとされています。
プールでの感染は、プールの塩素消毒をこまめにやることで防げますが、水泳前後のシャワー、水泳後の洗眼、など一般的な予防方法の励行が大切です。また、流行の拡大阻止のためには、プールを一時的に閉鎖する必要のあることもあります。7型感染症の場合には心肺機能に基礎疾患をもつ小児では重症化の危険性が高く、院内感染対策上重要です。
消毒法として、手指に対しては流水と石鹸による手洗いおよび90%エタノ-ル、器具などに対しては煮沸、次亜塩素酸ソーダを用います。逆性石鹸、イソプロパノールには抵抗性なので注意を要する必要があります。
予防接種としては、4・7型のアデノウイルスの生ワクチンがアメリカ合衆国で開発され、アメリカ軍の新兵たちがワクチン投与を受けていますが、市販はされていません。ある冬のこと、新兵たちの間で4・7型のアデノウイルス感染症が流行し約25%が発熱と下気道炎のため入院するという事件があったことがきっかけとなったとのことです。
最後に、手洗いの方法ポイントを示します。
1. 指輪、絆創膏などをはずす。
2. 流れている水道水で汚れを落とす。
3. 石鹸をつけて洗う。
4. 15~30秒もみ洗いをする。
5. ペーパータオル、個人の専用タオルで水気をふき取る。タオルの共用はやめましょう。
6. 水道の蛇口をペーパータオルで拭く。