― チック ―

 チックとは、自分の意思とは関係なく、突発的に、急速に、反復して、非律動的に、無意識のうちに体を動かす(不随意運動)癖のようなもので、緊張するとよけいにみられます。
 発症は18歳未満で、2歳頃から始まり、7~9歳頃が多く、4週間以上持続するものをいいます。男女比は3:1で男子に多く、子どもの10~24%がいずれかの時期にチックを起こすという報告もあります。米国精神疾患の分類と診断の手引き(1995)(DSM-IV)によれば種類と持続期間によって、一過性チック障害、慢性運動性または音声チック障害、トウレット(Tourette)障害に分けられています(表)。
 症状として、パチパチと瞬きをする、顔をしかめる、額にしわを寄せる、口をひん曲げたり、パクパクさせる、鼻孔をふるわす、頭を動かしたり、首を振ったり、ねじったりする、肩をすくめる、肩や手足をピクピクさせる、おなかをヒクヒクさせる、足をバタバタする、鼻をすする、鳴らす、咳こむ、唾を飲むなどの運動性チックと「グッ」「アッ」「ヒュー、ヒュー」と奇声を発したり、いろいろな発音が不随意にみられる音声チックが主なもので(図)、その他、約3%に関節や筋肉の冷感などの感覚異常のみられる感覚チックがあります。
 部位は顔面のものが多く、次いで首、肩となり、運動性チックは顔から下肢に進行します。症状が1カ所だけに現れるものを単純性チック、数カ所に現れるものを複雑性チックといい、単純性チックは一過性のことが多く、複雑性チックは経過が長くなります。また、顔から下に行くほど頻度は減りますが、逆に、末梢にチックがあるものほど重症で治りにくいようです。
 年長児で全身性の多発性チックに無意味な発声や卑わいな言葉を発したり(音声チック)、汚言(「バカ」「死ね」「クソババア」など)と呼ばれる1種の叫びなどがみられることがあり、トウレット症候群(TS:Gilles de la Tourette’s syndrome)と呼ばれています。

 最近、このような不随意運動などの錘体外路症状の原因として、大脳基底核・辺縁系の関与や神経伝達物質などの異常が考えられており、トウレット症候群ではTS遺伝子が見つかってきています。