テレビ・ビデオの子どもへの影響⑤
― 子どもへの影響③ ―
最近では、1999年の第46回日本小児保健学会で土谷みち子氏(日立家庭教育研究所)が「乳幼児期のビデオ視聴スタイルと子どもの発達」を発表しています。そのなかで、幼児教室の3歳児159名の1日のテレビとビデオ視聴の合計時間は、3時間以上が62.2%を占めていました(図1)。そのうち、乳児期から長時間繰り返し1人でテレビを見ている子ども10名の行動観察では、すべての子どもが友達関係がもてず、遊びが限られていました。さらに、10名中9名で表情が乏しく、気持ちが通わず、自分から話しかけようとせず、積み木などを何かに見立てることができませんでした。また、8名は視線が合わず、ごっこ遊びもできず、他の子が近寄ると逃げるなど、言語、情緒、コミュニケーションに問題があったと報告しています。結論として、テレビ・ビデオの視聴開始は1歳を過ぎてからとし、1回30分以下にするように提言しています。また、テレビを見る時は、誰かと一緒に見るようにし、見終わったら画面を消すことが大切だと言っています。また、同学会で川崎医科大学片岡直樹教授も「新しいタイプの言葉遅れの子どもたち-長時間ビデオ・テレビ視聴の影響-」のなかで、長時間テレビ・ビデオ視聴が深く関与したと思われる言語発達遅滞児20例を発表しています。子どもが言葉を獲得するためには、喃語が意味化すること、母親の音声を自発的にまねること、音声を目的にあわせて自発的に使用できるなどの段階があり、乳児が音を聞き、母親と乳児の相互作用(対話)が重要な役割を果たしているとしています。生後1年間は音を聞きわける「聞く準備」の時期であり、1歳から1歳半は「話す準備」の時期として大切で、大脳はほぼ3歳までの間に大人と同等のレベルにまで発達し、同時に基礎的なプログラミングも終えてしまいます。テレビ・ビデオからの一方的な言語的働きかけは言葉の発達に役に立たず、言葉のない子ども達への対応は早期にテレビ・ビデオを禁止することだと警告しています。発見が遅れた言葉遅れの子ども達は、自閉症に近い障害や、注意散漫、多動などのADHD(Attention Deficit Hyperactivity Disorder;注意欠陥多動[性]障害)傾向や、衝動、固執、情緒障害、学習障害(LD;Learning Disabilities/Disorders)などをきたすため、早期発見よりも2歳未満のテレビ・ビデオ視聴を禁止して、予防することが大切だとしています。