ノーテレビデー④
― テレビと暴力 ―
1995年より、米小児科学会(American Academy of Pediatrics;AAP)は、連邦政府のバックアップのもとにテレビ・ターンオフウイーク(子どものためにテレビを消そう週間)を設定し、数百万人が参加しています。
日本の子どもよりも、テレビを見る時間が少ないとの調査が出ている米国の子どもでさえも、高校を卒業するまでに、テレビの前で費やす時間を合計すると、三年以上になるといわれています。これほどテレビと子どもの関わりが深いのであれば、子どもに与えるテレビの影響は小さいはずがないと考えられます。凶悪な青少年犯罪の背景に、テレビやコンピューターゲームの影響も指摘され、今年 10月にはニューヨークで、少年が銃で殺傷事件を起こしたのは、暴力シーンの多いテレビゲームの影響だとして、被害者の遺族がゲームソフト会社に損害賠償を求める訴訟まで起きています。
NHK放送文化研究所は、2002年度に生まれた子ども百人を10年以上追跡調査し、子どもの成長と映像メディアの影響の解明に取り組む事になっています。また、NHKと日本民間放送連盟が設置した「放送と青少年に関する委員会」は昨年、子どもの成長とテレビの影響について把握するため、小学校5年生が中学2年生になるまでの四年間を追跡する調査をスタートさせています。昨年7月、その第一次基礎調査の結果が発表されました。テレビの暴力や殺人シーンを見た時、「いやな気分になる」と答えた子どもが49%なのに対し、「夢中になる」と答えた子どもが22%もおり、また、「暴力シーンの真似をしてみた」のは男子6%、女子3%でした(複数回答)。
さらに、子ども部屋にテレビがある家庭は35%、一日に5時間以上もテレビを見る子どもは13%にも及んでいます。この結果を見ただけで、子どもへのテレビの影響力はかなり大きいことが分かりますが、その一方で、子どもがテレビを自由に見ることを許している家庭が想像以上に多いことにも驚かされます。この調査結果を報告した同委員会委員の無藤隆・お茶の水女子大教授は「ほとんどの子どもはテレビをうまく使っているが、一、二割は夜遅くまで起きているなど、生活上の乱れがある。それが成長とともに、大きな問題に膨れていくかもしれない」と分析ししています。いま、青少年犯罪が社会問題となっているが、ほとんどは犯罪とは無縁の子どもたちであり、一部の子どもが問題だとされています。 日本ではこれまでテレビの影響力についてあまり調査が行われてきませんでしたが、日本より 15年も前にテレビの定時放送が始まった米国ではすでに、テレビの影響力について、官民合わせて1000を超える研究が発表されています。そこで常識となっていることは、テレビとくに暴力シーンに幼い時からさらされている子どもは、そうでない子どもよりも、のちの人生で暴力的あるいは攻撃的な行動をとる傾向が強いということです。その研究結果を踏まえて、米国小児科学会は子どもにテレビを見せる時の注意項目として、
①親が必ず一緒に見る
②見る番組を一緒に選ぶ
③一日の見る時間を決める、などを挙げています。