― 単純ヘルペス(単純疱疹)② ―
単純ヘルペス(疱疹)ウイルス(HSV)はありふれた病気で、多くの人は子どものうちに感染します。HSV初感染で、口内炎や微熱などの感冒様症状がみられるのは1割程度で、20歳代で60~70%、50歳以上ではほとんどの人が知らない間に感染してしまっています(不顕性感染)。最近、小児期にヘルペスに感染しない人が増えてきており、大人になってから初感染すると、症状がひどくなることもあり、ヘルペス(歯肉)口内炎として、口の中がただれ、潰瘍ができたり、歯肉が腫れたりします。また、アトピー性皮膚炎などで、皮膚のバリアが壊れている状態では、カポジ水痘様発疹症として顔面や前頚部、胸部などひどい場合には全身性に水疱が拡がり、発熱やリンパ節が腫れ(リンパ節腫脹)たりします。
ヘルペスウイルスには一度感染すると遺伝子として神経細胞の中に潜り込み、知覚神経を移行し神経節に侵入して、不活化してじっとしている性質があり(潜伏感染)、ヘルペスウイルスを持っていても発症しない人が多いのですが、風邪をひいたり、熱を出したり、胃腸が弱っていたり、強い紫外線にあたったり、過労やストレスなどで抵抗力が落ちている時や、HSV-Ⅱ型では月経や性交がきっかけで再発します。
初感染や再発でヘルペスに罹ったことのある人は約900万人いるといわれ、口唇ヘルペスやヘルペス口内炎で医療機関を受診する人は月に18万人、性器ヘルペスでは2万人とされ、風邪の流行期に多く発症しやすいようです。
単純ヘルペスの治療にはアシクロビル(ゾビラックス )という抗ウイルス剤を用いますが、初めての抗ウイルス剤なので、値段が少し高くなります。軽症では塗り薬(軟膏)でもよくなりますが、内服すればよく治ります。抗ウイルス剤は再発を完全に防ぐことはできませんが、再発を繰り返す場合には、水疱がでる違和感のある早い段階で内服すると軽く、早く治すことができます。重症例では点滴注射が必要となります。
口唇ヘルペスの水疱にマスクで覆って、接触を避け、保護することはかまいませんが、水疱や痂皮はつつかないようにすることが大切です。ウイルスは熱や紫外線や乾燥に弱いので、ウイルスがついていそうな衣類は、洗濯の前に一度煮沸すれば、後はいっしょに洗濯して、日光によく当てて十分乾燥すればさしつかえありません。子どもは初感染でも軽くすむ事が多く、大人は大半の人が免疫を持っているので、あまり神経質になる必要はありません。
潜伏感染しているヘルペスには抗ウイルス剤も効果はありませんが、再発のきっかけとなる刺激を避けることで、再発を予防できます。長時間の海水浴やスキーなどでの強い紫外線、冬場の寒冷刺激、極度の疲労や睡眠不足、暴飲暴食やストレス、感冒などにも注意が必要です。