外反母趾①
― 外反母趾とは・・・―
拇指の付け根の関節(第1中足指節関節)が小指側に曲がって、内側に突出しているもので、第1中足骨と第2中足骨のなす角度(外反母趾角、図1)が15度以上(左右合わせて30度以上)とされています(図2)。変形の程度と症状は必ずしも一致せず、痛みの経験は全くなく、いつのまにか変形がみられてきたものや、変形の始まった最初の2~3年間痛みがあるだけのものから、痛みが継続し変形の増悪とともに、第2足指の付け根の関節部の足底のたこの痛みが加わってくるものまでさまざまです。
本症は女性に多く、発症のピークは10歳代後半の若年性のものと40歳以降の中年にみられる特発性のものがあります。若年性のものは遺伝的な要因があり、幼児期から第1中足骨骨頭部が内側に突出している子どももあります。また、前足部の形態は親指の長さが第2指より長いエジプト型(日本人の約65%)、第2指が親指より長いギリシャ型(西洋人に多く、日本人の約20%)、親指から第4指までの長さがほぼ同じで、つま先が正方形をしている正方形型(直行型)に分けられますが(図3)、エジプト型はギリシャ型より本症になりやすいとされています。特発性のものは、足部の老化、筋力の強化を伴わない体重の増加、履物の影響などによると考えられていますが、最大の原因は先細の窮屈な靴を履くことによって拇指を外側に曲げようとする力が持続的に加わることによります。
外反偏平足があると、体重が足に均等にかからず、拇指側に負担が大きくなるために変形を生じ、本症を合併しやすいとされています。また、本症の多くは滑液嚢包腫(腱膜瘤、ブニオンbunion、図4)を合併します。
変形だけで疼痛のないものは治療の必要はありませんが、疼痛がある場合には、なるべく裸足で、鼻緒のあるサンダルなどに変え、鎮痛剤の内服を行います。履物を履かなければならない時は、先の細くない、拇指を外側に押し付けない、つま先の幅が広く、芯のしっかりしたヒールの低いものにします。拇指や第1、第2中足骨頭の過重を少なくするために、足底装具を靴の中に敷きます。変形の進行を予防するために、いろいろな装具を夜間に装着したり、5本指靴下を履いたりします。