外反母趾③
― 年齢別治療 ―
外反母趾の治療は、年齢を考慮して行ないます。
10歳以下の子どもには靴による外反母趾はほとんどなく、先天性の奇形に伴う症候性のものが多く、他の骨格奇形を伴うことがよくみられます。先天性の垂直距骨では、扁平足(べた足)を伴い、拇趾(母指)も曲がってきます。二分脊椎や、脳性小児麻痺などの筋肉の麻痺や痙縮をおこす病気では、その結果として外反母趾をおこすこともあります。
18歳ぐらいまでの若年期の外反母趾は、遺伝的要因が強く、関節の柔らかさ、筋肉の弱さなどの女性らしさが強く、指先が扇状に開き横アーチがつぶれてしまう開帳足が初めからみられ、扁平足の傾向も強く、外反母趾に対する抵抗性がなく、進行しやすく、治りにくい事になります。関節が柔らかく拘縮のない間は、運動療法や装具療法で経過をみますが、拘縮期で外反母趾角が30度近くに達するものでは、進行期にならないように、手術療法も考えます。特に、20歳代にどうしてもハイヒールやファショナブルな靴を履きたければ手術が必要になりますが、手術をしても、あまり高いハイヒールを履けば再発します。したがって、術後の定期的観察が必要です。
ハイヒールを履いておこった成人の外反母趾は、ハイヒールを履く機会が減るまで、進行期に進むのをくい止めることが重要です。そのためには、外反母趾角だけでなく、拇趾の付け根の関節の拘縮の有無と種子骨の位置が問題となりますが、ここでは靴と拘縮予防のための運動療法が大切となります。特に靴は、痛みがないことだけでなく、拇趾を外側に押さないで、第1中足骨を押さえ込んで、内側に開かないようにする必要があります。拇趾の痛みがあるからといって、ただ幅の広い靴を買えばよいわけではありません。拇趾の付け根がゆるいほどの幅の広い靴や、伸縮性の素材で付け根を覆う支持性のない靴は、一時的には痛みはとりますが、長期的には変形を強くします。外反母趾を治療する靴は、①外反母趾を予防する靴としての基本的な条件を備えている。②痛い場所が押されないように改良されている。③中足骨骨頭の中枢部で中足骨が横に広がらないように、横アーチ、縦アーチが下がらないように、しっかり支持されている。ことが必要となります。その上で、軽くて、デザインと色合いがよく、適切な値段でなければなりません。まず、シューフィッターのいる靴屋で本来の足に合った靴をみつけ、球環挟(シュースプレッダー、図1)やシューストレッチャー(図2)で拇趾の付け根の出っ張って当たる痛みのある部分を広げ、革の軟化剤のスプレーをして足に靴を合わせます。外反母趾では、足の縦、横のアーチが崩れ、扁平足、開帳足になるため、アーチサポートと中足骨パッドをつけた足底板(図3)で、壊れたアーチを下から押し上げ、拇趾の付け根の関節の下が痛む種子骨の障害に対しては凹みをつけて圧迫を避けます。