― 子どもとコンピューター ―
1999年に発達心理学者のジェーン・ハーリー氏が「コンピュータが子どもの心を変える」を著し、無計画なコンピューターの使用は、子どもの脳神経や心、視力や姿勢、また、電磁波などの放射線の問題など、子どもの健康や発達に対する影響は十分研究されておらず、家庭や学校で何らかの規制をしていく必要があることを述べています。
そのなかで、脳には特定の年齢に新しい能力を開花させる臨界期(感応性の高い時期)があり、コンピューターの使用は2次元の象徴的活動なので、発達段階からみれば、6、7歳ぐらいまでは適切ではなく、コンピューターの使用は少なくとも、抽象的な論理思考が始まる11歳頃からが妥当であるとしています。これは、4~5歳の幼児は、現実と空想の区別がつかず、何でもできる自分になりたい欲求から、万能のヒーローになりきってしまう時期であり、8歳ぐらいまで発達し続ける脳への影響はきわめて大きいことからもわかると思います。
アメリカでは、コンピューターが学校、幼稚園、家庭に普及し、コンピューターによる教育が急激に広まっています。日本でも、文部科学省は2000年度から教育現場にコンピューターの導入を進めていますが、教育ソフトのレベルの問題や、指導できる教師が少なく、コンピューター業者任せになりやすいなど多くの問題が残されています。よく訓練された教師の指導のもとに、年齢にあった形でコンピューターが使用されるなら、有効な教育手段となると考えられます。
このような状況のもとで、親として、家庭としては、子どもたちがコンピューターを活用する時に、どのようなソフトを使い、どのように利用しているかを把握して、親自身も実際に体験し、理解しておくことも必要です。そのような場面で、逆に、子どもたちから、コンピューターの使い方を教わることもあり、その中で、親子のふれあいができることもあります。コンピューターを置く場所もオープンな場所で、親の目の届くところで情報を共有すれば、たとえば、暴力的な映像や描写があった時に、大人がコメントしてやれば、子どもへの影響を抑えることもでき、話し合いの場も増えることでしょう。
最も大切なことは親子や家族の絆であり、コミュニケーションが十分できていれば、コンピューターにのめりこんで、中毒的な利用になることはありません。コンピューターは道具に過ぎず、それを上手に使いこなすことが大切です。情報社会が進む中で、コンピューターやテレビなどのさまざまなメディアから、隔絶された生活をすることは大変難しくなっています。しかし、これからの時代は発想を変えて、いろいろなメディアを、親子のコミュニケーションの道具としてうまく利用していくという考えも必要です。