― 少年問題を考える ―
-今、親としてできること-
最近、17歳のバス乗っ取りや金属バット母親殴打事件など、少年事件が多発し、少年犯罪も凶悪化してきています。こういう状況の中、今日的な話題として、「少年問題を考える」-今、親としてできること-というテーマで、第35回倉吉市小学校PTA連合会研究協議大会が9月9日に開催されました。私もコーディネーターとしてシンポジウムに参加し、4名のシンポジストの方々からそれぞれの立場から、少年問題を話していただきました。
初めに、倉吉児童相談所所長の西村建次さんが、「信頼関係の再構築」が大切だということを話されました。心が通じ合わなければ、信頼関係は出来ないので、子どもに会ったときに30秒、1分でもよいから話を聞いてあげることから信頼感が生まれる。子どもと共通の話題(趣味や遊び)を持つ中で、何か1つこれだけはできるものを創りあげる。それが、子どもの自信につながっていく。何か問題が起こった時は、①ぼちぼち(少しずつ)②これから(やろうぜ)③何とかなりますよ、という気持ちで焦らずに待って、子どもを見守ってあげる。夫婦同士が支え合い、ねぎらう事で、家庭内の父親、母親としての機能がうまくかみ合う。最後に、この1年で虐待の件数が1.2万件と倍増しており、今年11月からは児童虐待防止法も施行されるので、早期の対応が大切だという事でした。
2番目は西倉吉交番所長の警部補高野光明さんが、警察の立場から話されました。少子化で子どもが少なくなってきているが、少年非行は増加し、凶悪化している。今年上半期(1~6月)に警察が刑法犯として認知した事件が、初めて100万件を突破し、少年犯罪も凶悪犯の摘発が4年連続で1000人を越えた。倉吉管内でも少年補導は増加しており、身近なものとなっている。犯罪少年の共通点は、①孤独で、自分の城にこもっている②生活がゲーム感覚③親友がない④精神的異常のある場合がある。非行少年では、学力が遅れ、きまりが守れない、愛情のバランスが欠如した子どもが多い。自己の存在感をうまく表現できずに、スポーツや学問、芸術で得技のない子どもは、服装や容姿、言動で目立つことをする。それがエスカレートして反社会的行動、非行、犯罪につながってゆくので、何か一つできることを作っておく。非行少年の親は、①親が子どもに無関心②親が他力的で、人に頼って、他人まかせ。10歳ぐらいまでに、約束やきまりを守らせる躾をする。躾のポイントとして、①反復して教える②一貫性③習慣性。そして、父親は、この世で1番恐ろしいが、1番やさしくて信頼がある存在でなければならない。厳しさ3、優しさ5のバランスのとれた対応が必要。優しくて、信頼のあるのが父親である。非行にならないためには、親が子どもに目を向け、子どもの本質を理解し、親が本気になって立ち向かうことが大切だという事でした。
3番目は前河北中学校長の小谷次雄さんが現代の子ども気質と人間関係づくりを話されました。現代の子どもの気質は、①人間関係が希薄で、人間関係づくりが下手②人間関係を修復する力、元に返す力が弱い③規範意識の低下④活字を嫌い、言葉が少なく、文章が書けず、会話ができない⑤流行に敏感⑥一人一人は素直だが、集団に入ると変わってしまう⑦仲間意識は薄いが、画一性を求める⑧苦しいことは避ける。人間関係づくりとして、①朝の10分読書②学級づくり③親としての責任をとる事が必要。親は人生の先輩であり、自信を持って親の生きざまをみせ、経験を話す。親として子どもにできる事は、①子どもの良い面を見つける(プラス思考)②子どもの気持ちをよく聞くことが大切だということでした。
4番目に前鳥取県PTA協議会会長の吉田武章さんが、2000年度教育改革国民会議の中で語られている家庭教育の項目を引用され、家庭教育の責任は、生活の基礎訓練をすることであり、①団体行動に従える事(きまりを守る)②挨拶ができる事③単純な善悪をわきまえる事④我慢する事さえ、わが子に教えられれば家庭教育は成功したと言える。両親は子どもが最も理解しやすい、人生で最初の教師である。本当は子どもも親を尊敬したいのである。だから、親も理想としてでなく、生きざまを子どもに認識させれば、それでよい。親は自分の子どもに対する自己責任と信頼を持つことが大切であるという事でした。
2時間30分のシンポジウムはアッという間に終わり、最後に私が相田みつをの「育てたように子は育つ」という言葉を引用して閉会しました。