― 急性気管支炎 ―

急性気管支炎の主な病態は、気道粘膜上皮の障害による粘液線毛クリアランス能の低下によって、吸入した微生物(異物)の排除という防御機能が十分機能しなくなって気道の分泌物(痰)が増加した状態です。この痰や異物を除去するために咳をして、外に排除しようとしているのです。普通は発熱を伴う咳や鼻水が1~2日続いた後に咳が徐々に増えて、1~3週間程度続いて症状は軽快してゆきます。初め痰は出ず乾いた咳(乾性咳嗽)の後、2~3日でさらさらの白い痰がからみはじめ(湿性咳嗽)、徐々に黄色や緑色の痰となり、1~2週で白い痰になって元に戻ってゆきます。2歳以下の乳幼児では咳反射が弱く、線毛運動が未熟で喘鳴(ゼーゼー、ゼロゼロした音)を伴ったり、年長児では胸痛を訴えたり、肺炎、無気肺、副鼻腔炎を合併することもあります。
 原因はカゼと同様にウイルス感染によるものが多く、細菌感染や年長児ではマイコプラズマによるものもみられます。ウイルス感染によって、気道粘膜上皮が障害され、2次感染として細菌が感染することも多いようです。
 聴診上は吸気時(息を吸う時)にラ音という空気の流れの乱れた音がいろいろな程度に聞こえますが、胸部レントゲン写真や検査では特別な所見はありません。細菌感染では血液検査で炎症反応を示すCRPや赤沈(赤血球沈降速度)の数値や白血球数が増えたりすることが多く、逆に、ウイルス感染では炎症反応はあまり変動せず、白血球数はむしろ減少することが多いようです。
 治療はまず痰が粘くなって切れにくくならないように水分を十分とって、痰の粘りけをなくし、咳込んだ時に痰が切れやすいようにさらさらにしてやります。更に、痰の切れを良くしたり、痰や粘液の流れを良くするような薬や気管を広げて呼吸を楽にするような気管支拡張剤を用いたりします。咳込みがひどい時には吸入したりすることもあります。空気が乾燥していると気道から水分が失われやすく、痰が粘稠になりやすいので、加湿器を用いたりすることも良いでしょう。加湿状態にしたり、新陳代謝を促すために入浴も適宜行いますが、ぐったりした時、元気のない時、水分があまりとれない時など本人の状態が悪いときは入浴はやめましょう。細菌感染が疑われる時、咳がひどくなったり、長引いた時は抗生剤が有効なことも多いので、かかりつけの医師によく診てもらい、相談することが大切です。