― 扁平足(べた足)―
人の足の裏は平らではなく、横からみると弓のように反り上がり、中央部が陥凹したアーチ型をして「土踏まず」を形成しています。このアーチ構造は、歩いたり走ったりする時にしなって、足の動きを滑らかにして衝撃を和らげるクッションの役割をしています。扁平足は土踏まずのアーチ構造が浅くなり、そこが平らになってきたものです。
乳幼児の足は、フットアーチの形成が十分でなく、筋力が弱く、土踏まずの部分の脂肪が多いため、扁平足のようにみえますが、一人で歩けるようになるとアーチが徐々に形成されてきます。そして中年以降、老化に伴い再び扁平足傾向となります。
フットアーチが学童期になってもできず、足を後ろから見ると、踵の部分が外側を向いて外反足を伴っている場合を外反扁平足といいます。子どもの場合は、足の靭帯が弱いために、靭帯が緩くなった弛緩性扁平足です。その多くは外反扁平足で、外反足と扁平足が合併しています。おとなの場合は、関節の滑膜に炎症がおきる関節炎性のものが最も多く、その他に外傷性や麻痺性のものもあります。
おとなの扁平足では、足部や下肢や腰の痛みを感じることがありますが(有痛性扁平足)、だるくて何となく痛む程度の痛みで、激しい痛みのものはほとんどありません。これに対して、子どもの場合はほとんど自覚症状はありません(無症候性扁平足)
子どもの扁平足は足の靭帯が弱いためにおこることがほとんどなので、周りの筋肉を強化することから治療を始めます。裸足でやわらかい土を踏んだり、木登りをしたり、ジャンプしたり、つま先立ちやつま先歩きをして、足定筋の筋肉を鍛えます。変形の程度に応じて、足の裏のアーチを保持するために、足底板という靴の敷き皮のような装具を装着します。足底板を入れ、内反底屈筋を効率よく働かせ、二次的骨変形発生の予防すると、痛みがやわらぎます。扁平足は、筋力の強化と足底板を入れるだけの簡単な治療でほとんど治りますが、マッサージや入浴も効果を高めます。
変形が強く、足部の痛みなどの症状がみられる年長児では、関節の固定術などの手術療法を行う場合もあります。変形が長く残ると、下腿三頭筋や長短腓骨筋などの筋肉の拘縮が起こります。さらに、足根骨の骨や関節の二次的な変形が起こり、足部の変形は次第に硬く、固定してゆき、長時間の起立や歩行で足部の痛みや下肢の疲労や不快感がみられるようになります。このようにならないためにもよく歩いて、足を使い、症状が出る前に予防してゆくことが大切です。