― 気管支喘息と水泳 ―
一般に、陸上スポーツは過呼吸になりやすく、そのため気道から水分、熱が失われやすくなります。
気管支喘息児では、3~4分以上持続する激しい運動が気道を刺激して、気管支の収縮を起こし、喘息発作を引きおこします(運動誘発(性)喘息Exercise Induced Asthma,EIA)。気管支喘息では、温度や湿度や埃などの環境の変化やストレスなどに気管が敏感に反応しやすくなっており(気道過敏性の亢進)、重症例ほど気道過敏性は亢進しており、運動誘発喘息もおこしやすくなっています。運動負荷直後には肺機能は低下せず、むしろ良くなる例もありますが、5~10分で最も肺機能が低下し、15~60分後には回復してきます(即時型反応)。さらに、運動負荷後6~9時間後に再び肺機能の低下や喘鳴がみられるものがあり、これを遅発型反応と呼んでいます。
喘息発作を起こしやすい運動の種類としては、ランニングやマラソンがありますが、運動誘発喘息は運動の種類だけではなく、運動の強さや持続時間、喘息のコントロールの状態などにも影響されるので、一律に運動制限することは避けなければなりません。
これに対して、水泳は陸上スポーツに比べて埃の少ない環境で、呼吸が規則正しく、過呼吸になりにくく、横になって行なう運動であり、また、水スポーツのため湿度が高いので、気道からの水分の喪失が少なく、運動誘発喘息になりにくいとされています。さらに、1~2ヶ月以上続けることによって、運動能力の向上や気道過敏性の改善がみられます。このため、喘息治療の目的でスイミングスクールに通うことも多いようです。
しかし、重症児や喘鳴のある時に水泳を行うと、肺機能の低下や喘息発作を誘発することもあるので、練習前には異常がないかを確認しておきます。運動誘発喘息がある場合には、運動の15~30分前にDSCG(DiSodium CromoGlycate、インタール)やβ刺激剤を吸入すると発作を抑えることができます。
最近は、ピークフローメーターで自分の肺機能をある程度知ることができるため、調子の良い時(自己最良値)の80%以下にならなければ、水泳することもできます。水泳中に喘息発作をおこした時には、まず体をよく拭き、バスタオルでくるみ、腹式呼吸をさせて、水分補給をしながら、背中を叩いて、排痰を促します(タッピング)。20~30分休憩しても発作の改善がみられなければ、吸入する必要があり、発作時の対応をかかりつけ医に相談しておく事が大切です。
運動誘発喘息があると、運動を敬遠しがちとなり、運動能力も劣り、内向的で、心理面でも悪影響を及ぼす事がありますが、気管支喘息のある水泳選手が、過去のオリンピックで優勝したこともあり、水泳を続けて、泳げるようになる事で、運動することに自信を持ち、精神面にも良い影響を与えます。