発育期のサッカーにおけるスポーツ外傷・障害②
- 足関節捻挫 -
サッカーに多い下肢の外傷では、若年者ほど足部、足関節の外傷、特に捻挫が多くみられます。捻挫とは関節外傷の一つで、関節に正常の運動範囲以上の力が加わり、関節を支えている靭帯や関節包が引き延ばされたり、切られたりした状態です。捻挫の中では足関節の捻挫が最も多く、全体の約30%を占め、手指が20%、膝が10%前後を占めています。
足首の骨格は、外側に腓骨とその遠位端である外果(そとくるぶし)、内側に脛骨とその遠位端である内果(うちくるぶし)があり、この二つの骨を結びつける前後の脛腓靭帯の間に距骨がはまりこみ、内側には内果先端を要にした扇形の三角靭帯があり、外側には前後の距腓靭帯と踵腓靭帯があります。足関節の捻挫は、足関節が内側に横転して生じる内反捻挫が多く、外側に曲げられて起こる外反捻挫は少ないのですが、適切な治療が行われないと、不安定性から距骨の変性をきたし、変形性関節症となります。
足関節捻挫は損傷の程度により、Ⅰ~Ⅲ度に分けられ、急性期の治療ではⅠ度はテーピングあるいは弾力包帯固定、Ⅱ度はテーピングあるいは膝下からのギプス固定を3週間、Ⅲ度はギプス固定を6週間するか、スポーツ選手であれば手術的に1次縫合することが多いようです(表)。Ⅰ度は靭帯が切れずい伸ばされて、緊張を失い、ゆるんだ状態で、関節を十分支持できずにグラグラしているため、同じ所の捻挫をくり返し、関節内の炎症を長引かせることもあります。いずれにしても、受傷直後に専門の整形外科でみてもらうのは60~70%で、早期の適切な治療が大切です。受傷後20分以内に、RICE処置を開始するため、練習中は常に氷を用意しておく必要があります。RICE処置とは、Rest(安静)、Ice(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)のことで、氷水のバケツの中に15~30分足首をつけ冷やします。冷やす時間は体質などによって異なりますが、冷えすぎと感じたり、感覚がなくなる手前くらいで中止し、20~45分休んでくり返します。この時、弾性包帯を、引き伸ばさない程度の強さで巻き付けて圧迫すると効果が上がり、その後、テーピングか弾性包帯で固定して、氷嚢で冷やしながら、足を高くして休みます。
足関節損傷の予防のためには、運動前にアキレス腱や下腿の筋肉のストレッチングをして、筋と腱の伸展性を十分得ておくことが大切です。また、スポーツの特性にあった靴を使用し、バランス感覚を訓練しておくことも重要です。