発育期のサッカーにおけるスポーツ外傷・障害⑨
- コンパートメント症候群(comparttment syndrome、区画症候群)-
下腿の筋群は強い膜状の壁によって4つのコンパートメント(区画;骨、筋膜、筋間中隔、骨間膜などにより囲まれた隔室)に分けられています(図1)。コンパートメント症候群は、走りすぎやサッカーで蹴られて場合などの強い打撲、骨折などに伴う内出血などのいろいろな原因で(表)、コンパートメント内圧が上昇し、静脈還流不全が生じ、さらに毛細血管内圧(約25㎜Hg)を越えると、筋肉内お最小動脈が閉塞し、筋肉内の血流が傷害され、筋肉の腫脹、炎症が起こり、痛みを主体とした症状が出てきます。さらに進めば、筋壊死が生じ、重篤な後遺障害を残すこともあります。
4区画のうち、前部コンパートメント(すね)は前脛骨筋などの前下腿伸筋群、血管、神経を含み、発生頻度は約40%と多く、次いで深後部コンパートメントが約30%と報告されています。
運動開始後数分から数十分で、筋群が血液の流入によって腫大し、特徴的な部位(多くは前脛骨筋の部分)にうずくような、鋭い自発痛、圧痛、圧迫感がみられますが、安静によってすぐに軽快することが特徴です。神経、血管の症状として足部の知覚低下、しびれ感や冷感をきたし、足部と爪先を背屈させる力が低下し、爪先を持ち上げられなくなります。足部を背屈させると痛みを感じ、足背から、第1指と第2指との間にかけてしびれを感じます。また、それらの筋肉を受動的に伸ばすと痛みが強まったり、足首に力が入らなくなったり、さらに進行すると、爪先の甲の部位で脈を触れなくなります。
症状がはっきりしない場合、IT(足関節背屈等張性収縮)テスト(2秒で1回の背底屈)やIM(足関節背屈等尺性収縮)テスト(足背に抵抗を加えたまま最大収縮させる)を1分間行い、運動負荷によって症状が再現できるかどうかを調べます(図2)。
使いすぎが主な原因となりますが、コンパートメントの壁がもともと硬くて、起きやすい場合もあります。爪先走りを続けると、着地したときにブレーキをかける状態となり、そのストレスの繰り返しで区画内圧を高めることになります。また、軟らかい所から硬い所へのトレーニングサーフェイスの変化やシューズの変更、使い古したシューズを履くことなどが誘因となります。
重症例では手術的に筋膜切開を行い、区画内圧を下げることにより、1週間以内に歩行でき、2週間以内に軽いランニングもできるようになります。普通はRICE処置(安静、氷冷、圧迫、挙上)、マッサージ、外用剤塗布が行われます。
予防として、足関節底屈や内返しなどのストレッチングが行われます。