発育期のサッカーにおけるスポーツ外傷・障害⑩
― 腰椎分離(辷り)症(1)―

 若年のサッカー競技者で腰痛を訴える者は多く、中高生に行ったアンケートでは40%が腰痛を経験しており、95%以上がサッカー開始後に訴えています。特に粘土質の硬いグランドや取り替え式のスパイクを使用しているものによくみられます。若年のサッカー競技者の腰痛では腰椎分離症が問題となります。
 原因として、ボールを蹴る時に捻りの動きが加わることや、発育期では下肢、特に大腿四頭筋の筋力が十分に発達していないため、膝から下の蹴り出しが弱く、体幹を前屈させながら股関節を屈曲させて、下肢全体を前に蹴り出すような動作が疲労骨折の一つである分離症を引き起こすものと考えられ、シュート練習のやりすぎに注意が必要です。多くは腰椎の最下部の第5腰椎(骨盤骨との境界)の関節突起間に亀裂が生じ腰椎が前後に分離します。さらに、分離した腰椎の前方部分が前にずれるものを腰椎分離辷り症といい、予後も悪くなります。
 発生頻度は日本人全体では4~7%、小学生のサッカー選手やスポーツ選手では18~28%と高く、10~15歳の発育期のスポーツ活動が密接に関係しています。サッカーに限らず、過度のスポーツ活動により発生頻度は高くなります。
 症状はほとんど腰痛だけですが、小中学生では無症状のことも多く、長時間立っていると腰が痛くなったり、重くなったり、つっぱれるといったものや、スポーツ活動には支障ないが、スポーツ活動後に不快な痛みがあったり、急性の反復性の腰痛が数日から2週間くらい続いたりするものまで様々です。しかし、腰椎椎間板ヘルニアのように日常生活に支障をきたすような重篤な腰痛ではありません。
 腰椎分離(辷り)症では、分離した腰椎の後方部分が浮き上がり、腰部の階段状変形や腰椎前彎の増強がみられることがあり、正面、側面、両側45度斜位の4方向のX線撮影で腰椎分離を診断します。