発育期のサッカーにおけるスポーツ外傷・障害⑩
― 腰椎分離(辷り)症(2)―
腰椎分離(辷り)症の治療は年齢によって異なります。
初期で12~13歳頃までならば、コルセットを装用し、腰椎に異常があることを意識させます。スポーツ活動の制御を徹底させ、痛みの強いときは鎮痛薬を服用します。3~6カ月間練習を休み、腰痛が消失したり、なくなったものには、腰部に負担のかからない体育の授業から少しずつ運動を始めます。局所の安静を図れば骨癒合が期待できる場合もあり、2~3カ月に1回程度X線検査を行い経過をみます。しかし、X線上明らかな分離があり、硬化像が認められる場合には分離部の癒合は期待できません。また、時間が経過し、分離した状態が固定し、偽関節を生じると治りにくく、痛みをとるために休養し、腹筋を背筋の強化をすることになります。さらに構造的な障害が一生残ることも少なくないので、初期の腰痛や臀部の痛みの時期に専門医にかかることが大切です。
15歳以上では、腰椎分離発生後から長期間経過し、周囲支持組織の弛緩などが進行し、分離部の異常動揺性が増し、骨癒合能力も低下しているため、コルセットなどの保存的治療で治すことは難しくなります。腰痛のでないレベルまで運動量を減らし、腹・背筋を中心とした筋力増強訓練を行い、腰痛が軽くなるのを待って、スポーツ活動に復帰します。
腰椎の運動に関与する腰背筋群、腹筋群、殿筋群のバランスのとれた筋力の増強、維持、耐久性の獲得が必要となります。図のような脊柱機能テストを容易にこなせる程度の筋力と柔軟性をつくることが筋力増強の目安となり、これでも腰痛が軽減しない場合には、運動量を減らし、適切な時期に観血的な治療が必要になります。
発育期、特に10~15歳の腰椎分離の発生は、1日2時間以内、週5日以内の練習ではそれ以上のものに比べ少なく、使いすぎにならない適切な練習量の設定が腰椎分離の発生を予防します。さらに、早期発見・早期治療が予防にもつながります。