発育期のサッカーにおけるスポーツ外傷・障害⑬
― 応急処置「RICE」と「Hot-Ice」―
打ったり、突いたり、蹴られたり、転倒したりして、体のさまざまな部位に外力が加わると、捻挫や肉離れや打撲などの損傷が起こってきます。これらの損傷を最小限に抑えるために、RICE処置が行われます。
RICE処置とは、Rest(安静)、Ice(冷却)、Compression
(圧迫)、Elevation(挙上)のことで、冷やす時間は体質などによって異なりますが、冷えすぎと感じたり、感覚がなくなる手前くらいで中止し、20~45分休んで繰り返します。この時、弾性包帯を、引き伸ばさない程度の強さで巻き付けて圧迫すると効果が上がり、その後、テーピングか弾性包帯で固定して、氷嚢で冷やしながら、受傷部を高くして休みます(図1)。
最近、アメリカでは「Hot-Ice」治療が行われるようになってきました。これは、氷冷による凍傷を避け、患部を数時間にわたって均等に冷やし続けることができるという長所があります。組織を氷で完全に冷やすと、はずした後に冷却されていた部位の熱が上がり、血管が拡張し、血流が増加して温まり、逆に、冷却を保持できなくなります。氷水にアルコール(市販の消毒用60%エタノール)を少量入れると、0℃をわずかに超える理想的な冷却温度になり、組織に栄養を与える代謝は抑制されますが、完全にはブロックされません。
アイスボックスやバケツに約30個のアイスキューブと約2 (㍑)の水を入れ、市販の消毒用60%アルコールを少量(キャップ5杯程度)入れると、約1℃の「Hot-Ice」に最適な温度となります。このアイスボックスに7.5cm~10cm幅の弾性包帯とスポンジを入れておきます(図2)。足関節捻挫や大腿部の肉離れなどの受傷後、速やかに氷水で湿らせたテーピングパッドやスポンジを患部に載せ、その上から弾性包帯を巻き、「Hot-Ice」包帯として20分巻いておきます(図3)。圧迫包帯は、どんな場合でも必ず20分毎にはずし、4~5分間をおき、圧迫された部位に再び血液を流します。皮膚が一様に赤くなったら再び包帯を巻き、3~4回繰り返します。「Hot-Ice」包帯の際には、0.5 (㍑)の水に市販の消毒用60%エタノールをキャップ1~2杯加えたものを追加すると効果的です。