発育期のサッカーにおけるスポーツ外傷・障害⑭
― 大腿部肉離れ① ―
大腿部の肉離れは、急激なダッシュ、トップスピードでのターン、ストップなど大腿部の筋を強く収縮することにより、筋や筋膜が断裂し、発赤、腫脹、圧痛、運動痛などの症状がみられます。大腿部の筋の中でも、股関節の屈曲、膝関節の伸展を行う大腿直筋や股関節の伸展、膝関節の屈曲を行うハムストリング(大腿屈筋群)などの二関節筋によくみられます。
大腿四頭筋の中では大腿直筋の肉離れがほとんどで、スライディングされたり、衝突した時に、膝関節の屈曲を強いられ、かつ股関節の伸展されるような外力が加わった時に、これに抵抗するために筋を強く収縮し、この筋力が外力に打ち勝てずに筋損傷が起こります。また、急激なジャンプやダッシュなど、外力が作用しない時でも、筋の疲労や筋力のアンバランス、技術の未熟などの要因が加わって起こることもあります。
ハムストリングの肉離れは、半膜様筋、半腱様筋、大腿二頭筋長頭に起きやすく、ランニング中やスピードや走法が変化するダッシュ時など、遊脚期や蹴り出しの時に股関節を伸展しながら、膝関節を伸展する時にいろいろな要因も加わって起こります。
大腿部の肉離れの発症にはさまざまな要因があり、これを回避することにより予防することができます。発症要因として、①筋の疲労、②筋力不足、③筋力のアンバランス(大腿四頭筋とハムストリングの筋力)、④筋の柔軟性の不足、⑤筋収縮の協応性不調、⑥悪いフォーム、⑦技術の未熟、⑧ウォーミングアップ不足、⑨外気温(過度の低温、高温)、⑩多量の発汗によるミネラルの喪失などがあげられます。