発育期のサッカーにおけるスポーツ外傷・障害⑭
― 大腿部肉離れ(ストレインStrain)② -
大腿部肉離れは、筋の損傷の程度により3段階に分けられます。
Ⅰ度(軽症)はわずかに圧痛があり、患部の陥凹はなく、歩行は可能ですが、ランニング、ジャンプ時に痛みます。受傷後のRICE(Rest安静、Ice冷却、Compression圧迫、Elevation挙上)処置で、競技に復帰できることがほとんどです。最近では「Hot-Ice」といって、氷水に少量の消毒用エタノールを入れたものに、スポンジを入れ、患部にスポンジを当て、冷却した包帯で圧迫する方法が行われるようになってきました。組織傷害を極力減らすために、受傷後10分以内に「Hot-Ice」で冷却の圧迫包帯を巻くことが大切です。1分遅れると回復を1日遅らせるといわれています。
Ⅱ度(中等症)は、圧痛があり、内出血を伴うことが多く、患部の陥凹を触れることもあります。普通歩行は困難で、ランニングやジャンプはできません。十分なリハビリテーションが必要で、競技できるようになるまで1~3ヶ月かかります。
Ⅲ度(重症)は、強い圧痛と内出血があり、患部は陥凹し、筋断裂がひどければ手術が必要となることもあります。立って歩くことはできず、競技復帰まで3~12ヶ月を必要とします。
肉離れは応急処置が不十分だったり、リハビリテーションが不適切だったりすると、競技復帰後に運動痛や違和感を感ずるなどの後遺症を残したり、再発したりします。軽症では、応急処置後の適切な安静とトレーニングにより、競技復帰後は患部に違和感なく運動でき、再発もほとんどありません。中等症では、患部に違和感が残り、再発予防のトレーニングも行わなければならないこともあります。重症では、競技復帰まで1年かかることもあり、十分活動できず、競技を断念しなければならないこともあります。
肉離れのリハビリテーションでは、疼痛の消失、筋の柔軟性・協調性および筋力の回復、筋力バランスの調整が大切になります。また、競技復帰にあたっては、再発防止のために、筋の柔軟性の低下、筋力や筋持久力の低下、左右前後の筋力のアンバランスをチェックして、適切なトレーニングをしておく必要があります。